2012年12月13日木曜日

大好きだった人

私、勘三郎さんが大好きでした!
勘三郎になるず~っと前、勘九郎時代からの大ファンでした


先週、勘三郎さんが亡くなったというニュースを聞いた時の
驚きとショックは1週間たった今も、あまりにも生々しく胸をえぐられるようで
少しも悲しみは薄らぐことはありません


だけど!彼という役者を知り、舞台に夢中になり、通わせて頂いた
あの時代、自分自身が舞台人として駆け出し・・・いやっ
駆け出しにもまだなっていない生まれたてのひよこの時代に
経験、体験させて頂いたのは大変大きな財産だったと、思っています


勘九郎時代の勘三郎さんを初めて、自分の意思で観たい!と思い
歌舞伎座に伺わせて頂いたのがもう20年ほど前


当時、自分も音楽学校を卒業し、やっとお仕事として舞台に立ち始めた頃
風の噂で聞いた「勘九郎の髪結新三(かみゆいしんざ)」



































絶対に観たい!!と思い、自分自身のお稽古の合間をぬって
当時、同じ公演のお稽古をしていた同期をひとり誘い、歌舞伎座へ


歌舞伎を運営、興行する会社と同じ組織の為、当時私達に許された観劇の特権☆
お稽古のスケジュールは前日のみ決定する為、自分たちのプライベートは
まったくの後回し!舞台とお稽古が最優先とされる為、たとえ観劇といっても
前もってのチケット購入は難しく、ほんの1時間半程の映画すら
自由に計画を立てて観ることも許されなかったあの頃・・・


最大の特権は、会社が経営する映画館での映画鑑賞や
歌舞伎などの興行に突然伺っても、観せてもらえること!


行きましたよ~!
当日、突発的にお稽古の時間が少し空いた時など映画を観せてもらったなあ・・・


皆さん、羨ましいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが
上映途中から見始めて、上映途中で退場するんですよ!
ち~っとも良くはない!だって始めから終わりまで観たためしがないんだから(笑)


それでも!演劇、興行に携わる者として、少しでもお勉強になればいいと
会社が与えてくれた貴重な特権


そんなこんなで思いがけず空いた当時の私にとっての貴重な半日を
「勘九郎の髪結新三を観る!!」という大願成就の為(大袈裟?笑)
歌舞伎座へとむかったわけです


連れて行かれる同期は、何故そんなに私が
「勘九郎の髪結新三」にこだわっているかもよくわからないまま
ただ歌舞伎を観に行く!という目的でついてきてくれました


劇場の受付で突然
「舞台を観たい!」という私達の申し出に快く、すぐにお席を用意して下さった会社の方々
おまけに、「偉いね~!お勉強しに来たんだね!」とお褒めの言葉まで頂戴し
ワクワクとと花道のつけ際、揚幕のすぐ近くのパイプ椅子に腰をおろしました


勘九郎の髪結新三は評判が評判を呼び、客席は超満席の大盛況!
今は補助席というシステムが許可されてるかはわかりませんが(消防法上)
当時、もうこれ以上席はない!だけど観たいお客様は沢山いらっしゃる!という時には
パイプ椅子の補助席をずらりと並べ、対応していた時代


その超満員の客席に一等席にあたる場所に急遽作って下さったそのお席で
開幕からあっという間にどんどんと引き込まれていった私達
気持ちも身体もつんのめるように舞台を食い入って観ていましたが
花道から揚幕のチャリンという音と共に出てきた中村勘九郎にやられた!!


小悪党の新三が傘を差しながら目線を客席に走らせると・・・
鬢付け油の香りと共に漂うその色気に完全にノックアウト!!
カッコ良かったなあ~♥


見ていた同期と「ねっ!ねっ!絶対、私達のこと見たよね♥」と
まさしく目は♥♥♥
これって、思い込みの激しいファン心理にほかならず(笑)きゃーきゃーと
ミーハーで幸せな気分のまま劇場を後にしながら
この際せっかく来たのだから、来月自分たちの公演でお世話になる
スタッフの皆さんへご挨拶をしていこうと話をし
楽屋口で口番(こうばん)のおじさんたちにご挨拶をしていたところ・・・
ちょうど楽屋から出ていらした勘九郎さんに会い
「うわっ♥きゃっ♥」と思っていると、勘九郎さんが私達に向かって
「ねえ!今日、花道のところで観てたでしょ?」っておっしゃった!!


「きゃ~♥きゃ~♥そうです!やっぱり私達のこと見てたんだあ♥」と
いくらハートマークを書いても足りないくらいのミーハー気分で握手させて頂いた
その時の勘三郎さんの笑顔とあの弾んだ声が忘れられない・・・




























































































































その後、自分たちの身分と名前を名乗り、ご挨拶、お話させて頂いたこと・・・
翌月の私達の公演を時間があれば必ず観てくれると約束したこと・・・
残念ながら時間が取れず、観ては頂けなかったけれど
公演中、そのことをわざわざ楽屋にことづけてお帰りになられたこと・・・


出来もしない約束を、社交辞令でも決して安易にしないことを
かつてハリウッドスターとの交流で学んだこと・・・だからこんなひよこの私達にまで
きちんと約束が守れずごめんなさいと、わざわざお忙しい中ことづけて下さったこと


勘三郎さんをスゴイ!って思うのは何も舞台だけのことじゃない!
人として、本当に暖かくって、誠実でチャーミングで真っ直ぐだったってことがスゴイ!
舞台人としての才能や情熱はそれこそマグマのように熱く熱く、底知れないパワーに
溢れていたけれど、何よりも人間的な魅力にに溢れていた方


女優でもあるお姉さまの波野久里子さんが自分の弟である勘三郎さんを評して
「魂のきれいな人」と言っていらしたのがまさしくその通り
素晴らしいハートと魂を持った稀代の天才役者だったと思います


勘三郎さんのきれいな魂は多くの人を魅了し、勘三郎さん自身が言っていらした
「鏡獅子を踊る時、特に獅子になってからは、崇高な気持ちで
高く高く、高見を目指して踊っています」の通り、天高く駆け抜けていったことでしょう




 


突然の別れから1週間がたち、やっとこれを書く事が出来ました
本当に勘三郎さん、ありがとうございました


天国では大好きだったお父様、先代勘三郎さんや岳父、芝翫さんを
はじめとする諸先輩方がきっと勘三郎さんを暖かく迎えてくれたと思います


「おい!ノリ!お前ちょっと早過ぎやしないかい?」
「いや~、こんなに早く来るつもりはなかったんですけどね。
それよりせっかくこんな名優が揃ってるんだから芝居やりましょうよ!」って
きっと皆でお芝居の話をしているんだろうなあ・・・♪

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